老後資金は1,000万円とも2,000万円とも言われており、最近は20代から堅実に老後資金を貯め始める方も増えています。
でも、漠然と「そろそろ老後資金を貯めなきゃ」と思っても、なかなか行動を起こすのは難しいもの。
いつから貯金すべきか、貯めるとしたら毎月いくらずつ貯金すればいいか、などわからないことばかりですよね。
その理由は、老後資金としていくら必要なのかハッキリしないからではないでしょうか。
マイカーやマイホームは金額がわかりやすいですが、老後資金の金額は曖昧です。
逆に老後資金の目安がわかると、「いつから」「毎月いくら」などの具体的な貯金計画を立てることができるでしょう。
今回は、そんな老後資金の貯金計画、さらに効率的な老後資金の貯め方も解説していきたいと思います。
老後資金を貯金している世帯は多い
老後資金に必要性に注目が集まる今、しっかり老後資金を貯金している方は多くいらっしゃいます。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」の中に金融資産の保有目的についての調査結果があります。
3つまでの複数回答です。
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | |
---|---|---|---|---|
病気や不時の災害への備え | 54.1% | 45.2% | 47.7% | 54.1% |
こどもの教育資金 | 45.9% | 70.0% | 69.1% | 35.0% |
こどもの結婚資金 | 5.4% | 2.8% | 5.0% | 9.3% |
住宅の取得または増改築などの資金 | 27.0% | 18.4% | 11.4% | 11.4% |
老後の生活資金 | 29.7% | 41.7% | 48.9% | 71.4% |
耐久消費財の購入資金 | 16.2% | 16.6% | 16.8% | 14.5% |
旅行、レジャーの資金 | 40.5% | 19.8% | 14.0% | 12.6% |
納税資金 | 8.1% | 6.4% | 3.4% | 4.6% |
遺産として子孫に残す | 2.7% | 1.8% | 3.2% | 4.6% |
とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心 | 18.9% | 24.7% | 16.0% | 16.2% |
その他 | 8.1% | 6.0% | 4.8% | 4.8% |
(参考:知るぽると)
50代で7割以上の方が老後資金を貯金していることは予想通りの結果ですが、注目は40代までの割合の高さです。
40代では約半分、30代では4割以上、20代でも約3割の世帯がもう老後資金のための貯金を始めているのです。
早い段階からコツコツ貯金している方が多いことがわかりますね。
老後資金に不安を抱えている世帯も多い
老後資金を堅実に貯金している方が多い状況ではありますが、やはり、老後資金に不安の声が多いのも事実です。
その理由は「老後資金の目安がいくらかわからないから」だと考えられます。
だから、具体的な貯金方法がわからずに不安を抱えているのです。
老後生活に不安があるのは8割以上
公益財団法人「生命保険文化センター」の情報を参考にしてみたいと思います。
公正、中立な立場で生活設計と生命保険に関する情報を提供している財団法人なので、信頼できる情報でしょう。
令和元年度の「生活保障に関する調査」によると、自分の老後生活に「不安感あり」と答えた人の割合は84.4%、不安の具体的な内容を見ると、「公的年金だけでは不十分」が82.8%という結果になっていました。
やはり、老後資金に不安を抱えている方が非常に多いことがわかりますね。
(参考:公益財団法人 生命保険文化センター)
約5人の1人は老後の生活費がイメージできていない
さらに、同調査の中には、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費に関する調査も行っており、平均額は22.1万円となっています。
しかし、注目したのは「わからない」と答えた方の割合。19.6%もいるのです。
つまり、約5人に1人が老後の生活費が具体的にイメージできていないことがわかります。
(参考:公益財団法人 生命保険文化センター)
この2つの調査からもわかるように、やはり、必要な老後資金がハッキリわからないために、漠然と老後貯金に不安を抱えている方が多いのでしょう。
つまり、老後資金の目安がわかれば、スムーズに貯金計画を進めることができる可能性が高くなりますね。
次の章からは、この結果を踏まえて、老後資金の貯め方を考えていきたいと思います。
老後資金の貯め方は5ステップで考える
老後資金を貯めなけらばいけないという焦りや不安があっても、老後資金の貯め方がわからないと、なかなか老後資金を貯めることができません。
膨大な老後資金を貯めるためには、何となく貯金するのでは上手くいかないでしょう。
きちんと計画的に進めることが大切なのです。
そのためにおすすめしたいのが以下の5ステップです。
- ステップ1:老後資金を考える
- ステップ2:いつから始めるか考える
- ステップ3:毎月の貯金額を考える
- ステップ4:老後資金専用の口座を用意する
- ステップ5:先取り貯金をする
このように順序立てて考えることで、少しずつ老後資金への不安を解消しながら貯金計画を立てることができるでしょう。
詳しくご説明していきたいと思います。
ステップ1:老後資金を考える
5つのステップの中で、最も重要なのが、老後資金を考えることです。
ただ「老後のために毎月3万円貯めよう」と思って貯金しても、本当に1ヵ月3万円で老後資金が賄えるのか不安になってしまいますよね。
モチベーションを維持しながら貯金を続けるためには、しっかり「老後資金」というゴールの金額を設定することがとても大切。
それでは、老後資金はどのように設定すれば良いのでしょうか。
老後に必要な資金を考えるためには「老後にかかるお金」を考える必要があります。
総務省統計局の「総世帯及び単身世帯の家計収支(2018年)」のデータによると、平均的な高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の無職世帯)の1ヵ月の年金等の収入平均は222,834円、支出は264,707円です。
平均的な単身世帯(60歳以上の無職世帯)の1ヵ月の年金等の収入平均は123,325円、支出は161,995円です。
内訳は以下のようになっています。
実収入222,834円 | ||
---|---|---|
非消費支出29,092円 | ||
消費支出235,615円 | ||
内訳 | 割合 | 金額 |
食費 | 27.7% | 65,265円 |
住居費 | 5.8% | 13,665円 |
高熱・水道 | 8.4% | 19,791円 |
家事・家具用品 | 4.0% | 9,424円 |
被覆及び履物 | 2.6% | 6,125円 |
保険医療 | 6.4% | 15,079円 |
交通・通信 | 11.9% | 28,038円 |
教育娯楽 | 10.3% | 24,268円 |
その他 | 22.8% | 53,720円 |
不足分41,872円 |
(参考:総務省統計局)
実収入123,325円 | ||
---|---|---|
非消費支出12,392円 | ||
消費支出149,603円 | ||
内訳 | 割合 | 金額 |
食費 | 24.3% | 36,354円 |
住居費 | 12.2% | 18,252円 |
高熱・水道 | 8.8% | 13,165円 |
家事・家具用品 | 3.2% | 4,787円 |
被覆及び履物 | 2.5% | 3,740円 |
保険医療 | 5.5% | 8,228円 |
交通・通信 | 9.6% | 14,362円 |
教育娯楽 | 11.4% | 17,055円 |
その他 | 22.4% | 33,511円 |
不足分38,670円 |
(参考:総務省統計局)
消費支出とは、生活を維持するために行う支出です。
非消費支出とは、直接税や社会保険料など、消費を目的としない支出となっています。
夫婦世帯も単身世帯も、それぞれ不足分が発生しています。
「老後は年金収入があるから大丈夫」と思っているかもしれませんが、収入よりも支出のほうが上回っているのが現状です。
不足分は毎月貯金から切り崩してやりくりしてくことになるわけですね。
夫婦世帯では41,872円、単身世帯では38,670円不足です。
つまり、老後は毎月約4万円ずつお金がかかる計算になります。
老後25年だと考えると、1世帯あたり4万円×12ヵ月×25年=1,200万円の老後資金が必要ということになるでしょう。
平均的な高齢者の収支状況から、毎月約4万円ずつ必要であることがわかりました。
次に考えるべきことは、あなたの老後の支出を考えることです。
収入に関しては、個人年金保険などの金融資産がない限りは、上記の平均的な年金等の収入額を参考にして良いでしょう。
でも、支出に関しては個人差が非常に大きくなるので考えておく必要があります。
紙とペンを用意してください。
老後の生活をイメージして、上記の平均的な生活費に対してプラスになる支出を書き出してみてください。
以下のように、毎月、毎年、10年以内のイメージを描いてみましょう。
毎月 | 毎年 | 10年以内 | |||
---|---|---|---|---|---|
夫婦外食代 | 10,000円 | 旅行代(2回) | 100,000円 | 家のリフォーム | 800,000円 |
夫ゴルフ代 | 10,000円 | 演劇鑑賞(2回) | 40,000円 | 車買い換え | 500,000円 |
妻ランチ代 | 5,000円 | 孫へのお年玉など | 50,000円 | 家電買い換え | 400,000円 |
合計 | 25,000円 | 合計 | 190,000円 | 合計 | 1,700,000円 |
例えば、老後の生活をイメージした時に、このような支出を追加するとしましょう。
老後25年間でいくらになるか計算してみます。
毎月25,000円ずつプラスになるので、25,000円×12ヵ月×25年間=7,500,000円。
毎年190,000円ずつプラスになるので、190,000円×25年=4,750,000円。
合計すると、7,500,000円+4,750,000円+1,700,000円=1,395万円にもなるのです。
先程、老後資金の目安は1,200万円とご説明しましたが、このようにちょっとゆとりのある生活を送ろうとすると、さらに1,400万円もの金額が上乗せされてしまうのです。
少しゆとりのある生活を送ろうと思ったら、老後資金として2,600万円必要ということになりますね。
あなたの場合はどれくらいの老後資金になるでしょうか。
できるだけ詳しく老後の生活をイメージしながら計算してみてください。
老後のリアルな資金がイメージできたでしょうか。
でも、この資金を全て準備する必要はありません。
退職金を受け取れる場合があるからです。
退職金は、「退職するときの基本給×勤続年数ごとの係数×退職事由別の支給率」で計算されるのが一般的ですが、勤務している会社の退職金規定によって変わるので、総務や人事に確認するのが一番でしょう。
目安として、厚生労働省が発表したデータを参考にしてみます。
厚労省が発表した「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」によると、20年以上勤めた45歳以上の退職者のうち定年を迎えた人がもらった退職金(一時金・年金)の平均は、「高校卒(現業職)」1,159万円、「高校卒(管理・事務・技術職)」1,618万円、「大学卒(管理・事務・技術職)」1,983万円でした。
(参考:厚生労働省)
仮に1,159万円の退職金がある場合は、先程の2,550円から差し引くことができるので、貯金すべき老後資金は2,550万円-1,159万円=1,391万円ということになります。
まずは退職金がどれくらいになるのか確認しておきましょう。
社内規程を調べることもできますが、ストレートに人事や総務に聞くのが良いでしょう。
「辞めると思われそう…」と気が引けるなら、今後の貯金計画のために必要だと伝えるのがおすすめですよ。
このような流れで老後資金を明確にすると、老後貯金計画をスムーズに進めることができます。
老後資金を考えるのは大変な作業です。お金の計算が苦手な方は、老後の生活費や退職金を計算するのはすごく面倒に思うかもしれませんね。
でも、一度老後資金に向き合うことができれば、いつも「老後資金を考えなきゃ…」というモヤモヤがなくなるはずです。
頑張って、できるだけ具体的に計算してみてください。
ステップ2:いつから始めるか考える
老後資金が明確になったら、ステップ2は、いつから始めるのか考えることです。
毎月どれくらい貯金することになるのかシミュレーションした上で、いつから始めるべきか考えていきます。
先程の例の場合、老後資金1,391万円が貯金目標になりました。1,400万円を貯金目標とし、65歳まで5年、10年、15年、20年、25年、30年で貯金する場合のシミュレーションをしてみましょう。
貯金開始年齢 | 貯金期間 | 1年の貯金額 | 1ヵ月の貯金額 |
60歳 | 5年 | 280万円 | 233,000円 |
55歳 | 10年 | 140万円 | 116,000円 |
50歳 | 15年 | 93万円 | 775,500円 |
45歳 | 20年 | 70万円 | 58,000円 |
40歳 | 25年 | 56万円 | 46,000円 |
35歳 | 30年 | 46万円 | 38,000円 |
このように、60歳から5年間で貯金しようと思ったら、毎月23万円ずつ貯金が必要になってしまいます。これはかなりハードルが高いですよね。
でも、毎月3万円でも30代からコツコツ貯金すれば、1,400万円もの貯金をすることができます。これならぐんとハードルが下がりますね。
老後資金を始める時期は「いつから始める」という正解はありません。
ご家庭ごとの住宅ローンや教育費などとの考慮する必要があるからです。
しかし、上記のように、少しでも早く始めたほうが毎月余裕を持って貯金できるでしょう。
だから、いつから始めるか考えるよりも、今すぐ始めることをおすすめします。
ステップ3:毎月の貯金額を考える
老後資金が「いくら」で、「いつから」貯金するのか決定したら、毎月の貯金額を計算することができます。
ステップ3では、毎月の貯金額を決めましょう。
先程の例の場合、1,400万円を40歳から25年間で貯金すると決めたら、毎月約5万円ずつ貯金していけば、老後資金が準備できる計算になります。
ただ闇雲に老後資金を貯めるよりも、「毎月5万円ずつ貯金すれば、ゆとりのある老後生活が送れそう」ということがわかっていると、モチベーションを維持しながら貯金していくことができるでしょう。
しかし、毎月の貯金額を設定する際には、収入とのバランスを考えることも大事です。
貯金の理想割合は手取りの1~2割とされています。
借りに毎月5万円と貯金を決めても、毎月の手取りが25万円以下であれば、2割以上貯金することになるので、生活が苦しくなってしまうでしょう。
今の生活を犠牲にしてまで老後資金を貯めるのは嫌ですよね。
その場合は、老後資金を見直してみてください。
ステップ4:老後資金専用の口座を用意する
貯金目標がハッキリしたら、さらに貯金がスムーズになるような環境を整えましょう。
老後資金を貯めるコツは、老後資金専用の口座を用意することです。
一つの貯金用口座に全ての貯金をしている人もいると思います。でも、旅行資金や冠婚葬祭など、臨時出費があると、その都度引き出してしまいますよね。
老後資金は65歳のゴールに向けてコツコツ貯金して、「減らさない」ことが重要です。
老後資金専用の口座に貯金して、手を付けないようにしていきましょう。
今いくら老後資金が貯まっているのか一目でわかるので、モチベーションを維持しながら貯金することができるメリットがあります。
銀行口座を開設するのは面倒…と思うかもしれません。
でも、最近は、金融機関の窓口に行かなくても、ハンコ不要でインターネットやアプリから簡単に開設することもできます。
銀行のホームページから開設方法を確認してみてください。
ステップ5:先取り貯金をする
老後資金用の口座が準備できたら、最後のステップは先取り貯金をしていくことです。
貯金の基本は、生活費を使って残った分を貯金するのではなく、生活費を使う前に貯金する先取り貯金です。
毎月給料日になったら、給料が振り込まれる口座から貯金分のお金を引き出し、老後資金用の口座に入金すれば、貯金が確保しやすくなります。
自分で貯金するとサボってしまいそう…という人は、銀行の自動積立定期預金、会社の天引き制度を利用するのがおすすめです。
自動積立定期預金とは、予め貯金する金額、貯金する日を決めておき、自動的に普通預金から定期預金に振り替えられる定期預金です。
一度手続きをしてしまえば、あとは自動的に貯金が積み立てられていくので、貯金を忘れる心配がありません。
また定期預金にすることで、簡単には引き出せなくするメリットもあります。
積立貯金を希望する場合は、各銀行のホームページから必要物を確認し、銀行窓口やインターネットで手続きをする流れになります。
あながに変わって会社が、老後資金を積み立ててくれる制度があります。
銀行に預ける「財形貯蓄」と、会社があなたの貯金を管理する「社内預金」という2つの積み立て方法があるのです。
「社内預金」の場合は、あなたが預けているお金は会社の運用に使われます。その変わりに金利が高くなるというメリットがあります。金利重視で選ぶなら「社内預金」がおすすめです。
ただし、天引き制度は全ての会社に導入されているわけではありません。
興味がある方は、総務や人事に問い合わせてみてください。
老後資金を貯めるためには貯金計画が大切
今回は、老後資金の貯め方についてご紹介してきました。
そろそろ老後の資金を貯めようという気持があっても「いくら」「いつから」がわからないと、なかなか貯金計画が進みません。
逆に、しっかり貯金計画が立てられると、老後に向けて効率よく貯金していくことができるのです。
- ステップ1:老後資金を考える
- ステップ2:いつから始めるか考える
- ステップ3:毎月の貯金額を考える
- ステップ4:老後資金専用の口座を用意する
- ステップ5:先取り貯金をする
この5ステップを実践していくことが老後資金の貯め方です。
まずは、1ステップの「老後資金を考える」ことから始めてみてください。
はじめは少し面倒ですが、一度老後資金と向き合うことで、スムーズに貯金計画が進むでしょう。
効率良く節約生活を進めるためには、銀行口座を3つにすることが大切です。家計費用口座、特別出費用口座、貯蓄用口座に分けることで、いつのまにか貯金が増えていくかもしれません。それでは口座開設はどこがいいか?当節約ブログおすすめはイオン銀行です。
85点/100点中
※労力対効果・費用対効果を考慮した当節約貯金ブログのおすすめ度
私の場合(夫婦・子供2人)だと、老後資金を考えた節約方法で
60万円/1年間 貯金力を秘めています。
※表現や再現性には個人差があり必ずしも利益や効果を保証したものではありません。
(計算値:老後資金として1ヵ月5万円貯金で1年▲60万円)
ただ何となく「老後貯金をしよう」と思ってもなかなか貯金意識は高まらないでしょう。でも、具体的な目標額がわかると、毎月しっかり貯金しようという意識になります。毎月いつのまにか生活費に消えていた5万円を老後資金に回すことも可能になるでしょう。