ゆとりある老後のためには、いつから貯金すれば良いのでしょうか。
老後は節約すればいいから最低限の生活費だけ考えておこう、という方がいますが、体力が衰えていく中で、ギリギリの生活をするのは辛いことです。
年金と退職金だけで、何とか生活することはできますが、旅行や孫にお金を使えない老後生活は味気ないものになってしまいます。
老後資金は、ギリギリの必要額ではなく、ゆとりを持った必要額を考えておきたいですよね。
でも、漠然とゆとりある老後資金を貯めようと思っても、「いくらあれば安心なのか」「いつから貯金すればいいのか」がわからないですよね。
ゆとりある老後資金を貯めるためには、まず必要になる額をシミュレーションすること、その上で、具体的にいくら、いつから貯金するのか考えることが大切です。
そうすれば、ゆとりある老後に向けて、しっかり貯金計画を進めることができるでしょう。
老後の生活に「ゆとりがある」はわずか4%
実際に老後にゆとりある生活を送れている方はどれくらいいるのでしょうか。
厚生労働省が行った「平成30年国民生活基礎調査の概況」の中にある、高齢者世帯の生活意識調査の結果は以下のようになっています。
大変苦しい | 22.0% |
やや苦しい | 33.1% |
普通 | 41.3% |
ややゆとりがある | 3.7% |
大変ゆとりがある | 0.3% |
(参考:厚生労働省)
なんと、ゆとりがあると感じている世帯(ややゆとりがある+大変ゆとりがある)はわずか4%です。反対に、大変苦しいと感じている世帯は22%もいるという驚きの結果でした。
ゆとりのある生活を送れている高齢者は非常に少ないのが現状なのです。
十分な老後資金がない状態で老後に突入する方がとても多いことがわかりますね。
老後資金のゆとりある必要額を知る方法
それでは、老後にゆとりある生活を送るためには、どれくらい貯金があれば良いのでしょうか。
その必要額を知るためには、以下の3ステップで考えるとわかりやすいでしょう。
- 老後のゆとりある「生活費」を考える
- 「年金」と「退職金」を考える
- ゆとりある老後生活のための「貯金額」を考える
一つ一つ詳しく見ていきます。
老後のゆとりある生活費を考える
老後のゆとりある生活費を考えるために、平均的な老後の生活費と、ゆとりある老後の生活費を見てみましょう。
総務省統計局の「総世帯及び単身世帯の家計収支(2018年)」のデータによると、平均的な高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の無職世帯)の1ヵ月の支出は264,707円となっています。
平均的な単身世帯(60歳以上の無職世帯)の1ヵ月の支出は161,995円です。
平均的な老後の生活費は夫婦では約26万円、独身者は約16万円という現状がわかりました。
これはあくまで平均的な金額です。
厚生労働省の調査によると、ゆとりがあると感じている高齢者世帯はわずか4%です。
この平均的な老後の生活費ではゆとりある生活を送ることは難しいでしょう。
ゆとりある老後生活費をイメージする必要があります。
生命保険文化センターの「夫婦が老後の生活費はいくらくらい必要と考える?(令和元年)」という調査によると、ゆとりある老後生活を送るための費用として、以下のような結果が出ています。
公正な立場で情報を発信している財団法人の情報ですので、信頼できる情報でしょう。
ゆとりある老後生活費 | 割合 |
---|---|
20万円未満 | 2.8% |
20~25万円未満 | 7.3% |
25~30万円未満 | 10.6% |
30~35万円未満 | 20.8% |
35~40万円未満 | 9.5% |
40~45万円未満 | 10.8% |
45~50万円未満 | 2.9% |
50万円以上 | 15.6% |
わからない | 19.6% |
平均36.1万円 |
(参考:生命保険文化センター)
この調査によると、ゆとりある老後生活の平均は約36万円という結果になりました。
平均的な老後の夫婦生活費は約26万円でしたので、「プラス約10万円」必要になることがわかります。
この調査は夫婦の老後に限定しており、独身者のデータはありませんでしたが、夫婦二人でプラス10万円とすると、独身者の場合は「プラス5万円以上」をゆとり生活費として考えておくと良いでしょう。
さらに同調査から、老後のゆとりある生活費のために上乗せする金額の使途についても知ることができます。
ゆとりのための上乗せ額の使途 | 割合 |
---|---|
旅行やレジャー | 60.7% |
趣味や教養 | 51.1% |
日常生活費の充実 | 49.6% |
身内とのつきあい | 48.8% |
耐久消費財の買い替え | 30.0% |
子供や孫へ資金援助 | 22.4% |
隣人や友人とのつきあい | 15.5% |
とりあえず貯蓄 | 3.7% |
とりあえず貯蓄 | 3.7% |
その他 | 0.4% |
わからない | 0.4% |
(参考:生命保険文化センター)(複数回答)
このように、多くの方が様々な「ゆとり資金」を必要としています。
「旅行も趣味も友人とのつきあいも色々したい!」という方が多いことがわかりますね。
ゆとりある老後生活費の平均額は約36万円です。これを毎月65歳~90歳になるまで持続する場合には、36万円×12ヵ月×25年間=1億800万円の生活費が必要ということになりますね。
驚くような金額ですが、これがリアルなゆとりある老後資金なのです。
年金と退職金を考える
ゆとりある老後生活を送るためには1億円以上必要と聞くと驚いてしまいますが、あくまでもこれは老後にかかる金額であり、実際にこの金額を貯めなければいけないわけではありません。
年金と退職金の分を差し引くことになるからです。
老後のゆとりある必要額を知るためには、年金と退職金について具体的に考えておく必要があります。
65歳以降は年金を受け取ることができます。年金は国民年金と厚生年金に分かれています。
国民年金は、自営業や専業主婦が加入している年金です。
厚生年金は、会社員や公務員が加入している年金です。
厚生労働省の「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の平均受給額は、国民保険の平均は55,708円、厚生年金の平均は143,761円となっています。
(参考:厚生労働省)
例えば専業主婦世帯の場合は、夫婦で毎月119,469円の年金を受け取ることができる計算になります。
老後25年間で考えると、287,522円×12ヵ月×25年間=約5,900万円になります。
年金は、毎年1回、誕生月に届く「ねんきん定期便」を見ると、将来受け取れる見込み年金額を知ることができますのでチェックしてみてください。
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」によると、20年以上勤めた45歳以上の退職者のうち定年を迎えた人がもらった退職金(一時金・年金)の平均は以下のようになっています。
高卒(現業職) | 1,159万円 |
高卒(管理・事務・技術職) | 1,618万円 |
大卒(管理・事務・技術職) | 1,983万円 |
(参考:厚生労働省)
大卒の事務職の場合は、約1,900万円の退職金が期待できることになります。
退職金は、社内規程から知ることができますが、具体的な金額を知るためには、総務か人事に問い合わせる必要があるでしょう。
「退職金を聞いたら辞めると疑われそう…」と思うかもしれませんが、退職金はゆとりある老後資金を考える上でとても重要なものです。
老後貯金計画のために必要であることを説明して、きちんと聞いておくと良いですね。
年金と退職金がわかると、必要な貯金額を計算しやすくなります。
専業主婦世帯の夫婦(大卒・事務職)がゆとりある老後生活を送るためには、いくらの貯金が必要なのか計算してみましょう。
1億800万円(ゆとりある老後生活費)-5,900万円(年金)-1,900万円(退職金)
=「3,000万円」ということになります。
ゆとりある老後生活を送るためには、トータルで3,000万円の貯金が必要ということですね。
ゆとりある老後資金はすぐに始めることが大切
専業主婦、共働き、勤続年数など、様々な事情により年金や退職金が変わるので「ゆとりある老後に必要なお金はいくら」とハッキリ言うことはできませんが、上記の例では、約3,000万円が必要になることがわかりました。
それでは、この老後資金はいつから貯金すれば良いのでしょうか。
「老後資金のゆとりある必要額=3,000万円」から、貯金シュミレーションをしてましょう。
貯金開始年齢 | 貯金期間 | 1年の貯金額 | 1ヵ月の貯金額 |
30歳 | 35年 | 85万円 | 7万円 |
35歳 | 30年 | 100万円 | 8.3万円 |
40歳 | 25年 | 120万円 | 10万円 |
45歳 | 20年 | 150万円 | 12.5万円 |
50歳 | 15年 | 200万円 | 16,6万円 |
55歳 | 10年 | 300万円 | 25万円 |
60歳 | 5年 | 600万円 | 50万円 |
60歳になってから3,000万円貯めようと思ったら毎月50万円ずつ貯金することになります。現実的な貯金計画とは言えないでしょう。
40歳ならどうでしょうか。毎月10万円貯金するのは大変ですが、毎月5万円ずつ貯金しながら、年に2回のボーナスで35万円ずつ貯金するなら可能ではないでしょうか。
30歳から貯金を開始すれば、さらにハードルは低くなります。
毎月3万円ずつ貯金し、年に2回のボーナスで25万円ずつ貯金すれば良いことになりますね。
ゆとりある老後のための貯金額はかなり高額ですが、このように時間を味方につければ意外と簡単に貯金することが可能になります。
「〇歳から貯金すれば安心」というのではなく、今すぐに始めることが大事なのです。
ゆとりある老後資金は強制的に貯金することが大切
ゆとりある老後資金は平均的なデータから見積もっても3,000万円という高額であることがわかりました。
短期間で貯金できる額ではないので、できるだけ早い時期から計画的に貯金していくことが大切です。
そこでおすすめしたいのが、強制的に老後資金を貯金する仕組み作りをしておくことです。
旅行資金やマイカー資金とは違い、老後資金への貯金は長期戦になります。
だから、きちんと仕組み作りをしておかないと「今月は生活費が苦しいから老後貯金は後回し」と適当になってしまう恐れがあるのです。
強制的に老後資金を貯金するためには、「銀行の自動積立定期預金」「会社の天引き制度」という2つの方法があります。
銀行の自動積立定期預金を利用する
まずは、銀行の自動積立定期預金で強制的に貯金する方法です。
自動積立定期預金とは、貯金する金額、貯金する日を決めておくと、毎月同じ金額が自動的に普通預金から定期預金に振り替えられる定期預金です。
定期預金にしておけば、満期になるまでお金を引き出しにくいので、「ついつい老後貯金を切り崩してしまう…」を防ぐことができるでしょう。
老後資金を貯めていくなら、金利の高いネット銀行がおすすめです。
例えばゆうちょ銀行の定期預金の金利は0.002%ですが、ネット銀行の楽天銀行の定期預金は0.02%となっています。
ねらい目は金利キャンペーンです。各銀行では、高金利になるキャンペーンを随時実施していて、0.2%の高金利になることもあります。
0.002%の金利では、100万円を10年預けても、20円の利息にしかなりませんが、0.2%の金利なら2万円になりますね。
「ネット銀行 金利 キャンペーン」でインターネット検索すると、お得な金利情報を見つけることができます。
しかし、銀行に老後資金を積み立てる時には、一つ注意事項があります。
それは1,000万円を超えた時です。万が一銀行が破綻した場合、1,000万円までは保障されます。
でも、1,000万円以上の貯金は失ってしまう場合もあるのです。
1,000万円を超えた時点で、他の銀行にも分散するのが賢い方法であると覚えておいてくださいね。
会社の天引き制度を利用する
会社が、給料から老後資金を天引きして積み立ててくれる制度があります。
大きく2つのタイプに分かれており、銀行に預ける「財形貯蓄」と、会社があなたの貯金を管理する「社内預金」という積立方法があります。
おすすめは「社内預金」です。銀行に預けるのではなく会社に預ける形になります。会社はそのお金を会社の運用に使い、その対価として高金利となるのです。
社内預金の金利は最低でも0.5%となっています。先ほどご紹介したキャンペーン金利の0.2%をさらに上回っていますね。
100万円を10年預けた場合は、5万円の利息が見込めることになります。
でも、残念ながら、天引き制度は全ての会社が実施しているわけではありません。
福利厚生の一つなので、あなたの会社に導入されていない場合もあります。
天引き制度の有無は、総務や人事に問い合わせるとわかるでしょう。
このような方法で強制的に老後資金を積み立てる仕組みができていれば、毎月の老後資金のための貯金は「ないもの」として生活費をやりくりすることができます。
これが大きなメリットです。
貯金が苦手な方、ついつい無駄遣いをしてしまう方は、この方法がとても効果的になります。
無謀に思える3,000万円という老後資金も、30歳から毎月7万円ずつ積み立てれば叶う金額です。
しかし、この強制的に貯金する方法は、あくまでも、その貯金が「今の生活を圧迫しない」ことが前提です。
貯金の目安は手取りの1~2割が理想とされています。それ以上の貯金をすると、生活が苦しくなってしまうでしょう。
手取りが35万円であれば、7万円貯金は、手取りの2割なので何とかなるでしょう。
でも、手取りが25万円で7万円貯金するのは無謀です。
ゆとりある老後を送ることは大切ですが、そのために今の生活が苦しくなるのは嫌ですよね。
老後のゆとりバランスと、今の生活のゆとりバランスを考えて必要額を決めていくことが大切です。
さらに、強制的な貯金を始めるタイミングで、固定費のスリム化を図ることが効果的です。
次の章で詳しく説明していきましょう。
ゆとりある老後資金のために固定費をスリム化することが大切
急に老後貯金を始めると、当然生活費が足りなくなってしまいますよね。
老後資金のために安定して貯金を続けるためには、今より支出をおさえる努力が必要になります。
でも、食費や交際費を我慢するのはストレスが貯まってしまい長続きしないでしょう。
そこでおすすめしたいのが、固定費のスリム化です。
食費などの変動費を毎月節約するのは大変ですが、固定費なら一度安くしてしまえば、自動的に毎月節約できることになります。
住居費や光熱費などを節約するのは難しいかもしれません。でも、以下のように意外と簡単にスリム化できる固定費もあるのです。
スマホ代の見直しをする
まず一番に取り掛かりたいのが、スマホ代の見直しです。
契約した時につけたオプションが放置されていたり、不要な通話、通信プランがそのままになっていることがあります。
必要最低限のプランに削ることで、月額3,000円ほど安くなることが期待できます。
夫婦で見直せば、1ヵ月6,000円も固定費をスリム化できるかもしれません。
保険料の見直しをする
毎月当たり前のように支払っている保険料ですが、もしかしたら不要な支払いを続けているかもしれません。
例えば、もし病気やケガで入院や手術が必要になった場合には、高額医療費制度を利用することができるため、1ヵ月の医療費の上限は数万円になります。
そのため、毎月高額な医療保険を支払う必要はない場合があるのです。
夫婦の医療保険を解約すれば、1ヵ月7,000円ほど節約できるでしょう。
月額制サービスの見直しをする
最近はお得な月額制サービスが増えているので、その後、あまり利用していなくてもそのまま放置してしまいがちです。
一つ一つの月額料金は安くても、実は結構な無駄遣いをしているかもしれません。
例えば、動画サービス1,000円、音楽サービス500円、電子書籍サービス500円、有料アプリ500円、レシピサービス300円の月額料金を全て解約したとしましょう。
夫婦で同じように解約すれば、1ヵ月5,600円の節約効果が見込めますね。
このように、固定費を見直すことで、上記の場合は1ヶ月18,600円のスリム化が見込めます。1年では223,200円にもなります。
固定費見直しは、調べるのが面倒というデメリットがあります。一つ一つ解約方法を調べて解約手続きをするのは大変な作業ですよね。
でも、最近はほとんどの固定費が、WEB上での変更、解約が可能になっています。
一度、変更、解約してしまえば、その節約効果が自動的にずっと続くことになりますので、ぜひ頑張って調べてみてください。
また、一度固定費を見直し作業をやってみると、意外と固定費見直しが億劫ではなくなります。
「ちょっと料金プランを変えただけで、こんなにお得になった!」という成功例ができると、今後も固定費見直しが楽しくなるかもしれません。
老後貯金をきっかけに、日々の節約効果がぐんと上がるかもしれませんね。
まずは、ノートに全ての固定費を書き出して、その中から見直しできるものをピックアップしてみてください。
ゆとりある老後資金のために、できるだけ早く貯金を始めましょう
今回はゆとりある老後生活のために「いくらあれば安心なのか」「いつから貯めれば安心なのか」について考えてきました。
夫婦がゆとりある老後生活を送る為に必要な金額は、平均的な夫婦の場合、約3,000万円というのが当サイトの見解です。
老後資金は1,000万円、2,000万円と言われていますが、ゆとりある生活を送るためにはさらに多くの資金が必要になります。
だから、始める時期の正解は「今すぐ」です。早く始めないと、毎月貯金すべき金額が高くなるので、どんどんハードルが上がってしまいます。
だから、できるだけハードルが低い時期に始めるのが賢いのです。
銀行の自動積立定期預金や会社の天引き制度を利用して強制的に貯金していく仕組み作りをすると、計画的に貯金できるでしょう。
同時に固定費を見直して、家計をスリム化することも大切です。
効率良く節約生活を進めるためには、銀行口座を3つにすることが大切です。家計費用口座、特別出費用口座、貯蓄用口座に分けることで、いつのまにか貯金が増えていくかもしれません。それでは口座開設はどこがいいか?当節約ブログおすすめはイオン銀行です。
90点/100点中
※労力対効果・費用対効果を考慮した当節約貯金ブログのおすすめ度
私の場合(夫婦・子供2人)だと、ゆとりのある老後貯金の節約方法で
223,200円/年間 貯金力を秘めています。
※表現や再現性には個人差があり必ずしも利益や効果を保証したものではありません。
(計算値:スマホ代見直しで1年▲72,000円、保険料見直しで1年▲84,000円、月額制サービス見直しで1年▲67,200円)
ただ漠然と「ゆとりある老後資金を貯めたい」と思っていても、なかなか貯金は増えません。
しっかり老後資金を向き合って、固定費をスリム化することができれば、このように意外と簡単に貯金を捻出できるかもしれません。